【過去】無人労働論(3) AMAZON社 ー不徹底な無人労働化の一例ー

 そういえば、以前に比べて直接店舗に行って買い物をする機会が減ってきた。さすがに、衣服や靴などサイズ合わせが必要な商品、大型家電、大型家具のように自分の部屋で利用可能か否かの判断が必要な商品を購入する時には、店舗で実物を確認する。しかし、それ以外の商品はほとんどIT上のオンラインストアで購入することが多い。

 書籍は言うまでもなく、音楽や映像もオンラインストアを通じて電子媒体をダウンロードすることが増えてきたし、旅行の航空、鉄道チケット、宿泊先の予約もネット上で予約した方が安上がりであることが多い。あるオンラインストアから1度予約、購入を行うと、次からはレコメンデーション機能(過去の購入履歴などから顧客一人ひとりの趣味や読書傾向を探り出し、それに合致すると思われる商品をメール、ホームページ上で重点的に推奨する機能)により、必要な商品の情報はどんどん提供されてくる。販売、営業、店舗の運営維持などのために必要な人的労働力は次第にこの世界から必要ないものになりつつある。

 本稿では、世界的に成功したとされるオンラインストアの一例としてAMAZON社の事例を紹介し、特に物流という観点から今後の無人労働化への方向性を展望したいと思う。

 AMAZON社はウィンドウズ95が世界的に普及しはじめた1995年にジェフ・ベゾズによって企業されたオンラインストア企業である。起業当初はコンパクトディスク、コンピュータハードウェア、コンピュータソフトウェア、ビデオ、書籍という5商品に絞った販売を行っていたが、現在は小型家電、日用雑貨、コスメ、スポーツ用品、衣服なども手広く扱っている。2011年以降は電子図書リーダー「kindle」の販売、音楽、ビデオのダウンロード販売に乗り出し、メディア商品の電子商品化を促進した。AMAZONおよびそれに類するオンライン商法の普及により、紙面の書籍、CD、DVDを販売、レンタルを扱う小売店は壊滅的な打撃を受けることになった。

 そして、オンラインストアで販売する商品の広報は前述したレコメンデーション機能によって行う。レコメデーション機能はamazonの最大の武器であり、一部では個人の嗜好や信条の情報収集になっているという批判を受けながらも、継続されている。

 AMAZON社のようなオンラインストアの普及により、直接の販売や営業に必要な人的労働力は大幅に縮小された。必要な人的労働力はオンラインストアの技術更新、商品情報、そして流通のための労働力である。

しかし、急激に巨大化したAMAZON社は倉庫、流通といった物流分野には致命的な弱点を抱える。AMAZON社は否定するが、膨大な量の商品の出納を行う倉庫はスタッフが極めて劣悪な労働環境に置かれているとの批判が根強い。

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また、流通の分野ではできるだけ短い時間で商品を届けるAMAZON社に対して人手不足に悩む運輸業界が音を上げ、一部の大手運輸業者はAMAZON社商品の扱いを停止した。電子商品化できない物的商品の物流は、巨大化したオンラインストアにとって、最大の弱点となっている。

では、このことが物流業界における雇用の促進にはつながるのだろうか?無人労働化の動向を調べている筆者は、この点については悲観的な観測を示さざるを得ない。

まず、倉庫のついてだが、どこにどんな商品を置くのかルールを明確化しやすい倉庫は極めてオートメーション化がしやすい分野である。AMAZON社のような大手企業では、オートメーション化の推進はそれほど難しくはないように思われる。

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 次に流通についてだが、AIによって人間が運転しなくても自動運転してくれる無人自動車が実用化すれば、人的労働力の運転手は必要のないものになっていくだろう。

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 倉庫のオートメーション化も、無人自動車の実用化も、それなりに費用がかかることなので、一朝一夕に実現する訳ではない。しかし、それが雇用の維持につながるので、人的労働力は安泰だと考えるのも早計だろう。元々、人手不足に悩む物流業界において、無人労働化はむしろ進みやすい分野と言えるかもしれない。

 要約すると、オンラインストアは確実に無人労働化を促進することになった。しかし、物流というアキレスけんを抱えていたという意味では不徹底だったのである。

 次回は、いよいよ21世紀初頭に加速したフィンテックに言及することにしよう。

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