【現代】メタリアルな条件を考察する

 障害者就労支援の基本は働く(あるいは働こうとしている障害者)や障害者を雇用しようとしている事業所に対する無形のサービスと言ってよい。無形のサービスとは具体的には障害者に対する教育や職業訓練、事業所に対する研修や助言、情報提供などのことである。ハードとソフトという区分を用いるならば、ソフトの部分に働きかけるのが、障害者就労支援と言ってもよい。

 それに対して、筆者の言うメタリアルな条件とは形があるか、数字によって測定できるような条件のことである。具体的には建物、機械、危惧、道具などの設備、あるいは雇用した障害者に具体的に提供できる業務の量、教育や配慮に割くことのできる人数や時間、そして設備にかけることのできる予算などのことを指す。

 このうち前者の設備については、就労支援者を通じて事業所に対して様々な情報提供がなされているし、事業所が必要に応じて申請することのできる助成金はあるので、無為無策な状況にあるとは言えない。問題になるのは、メタリアルな条件の中でも、具体的に提供できる業務の量、教育や配慮に割くことのできる人数や時間である。主にソフト面を担当する就労支援者は正直なところ、この点については十分な力を発揮することができているとはいいがたい。

 例えば、業務量の確保は、その事業所にどれぐらいの業務が転がっているのか、転がっていた業務は雇用した障害者が遂行できる業務なのかといった条件に左右される。就労支援者は他社の事例などを情報提供することはできても、その事業所にどのような業務が転がっているのかまでは、分かっていない場合が多い。

 また、雇用した障害者に対してその事業所がどの程度の人員、時間を割けるのかという点についても、就労支援者にできることは極めて限られてしまっている。いくら有効な支援技法などの情報提供を行っても、事業所が多忙であり、教育や配慮に割ける時間が十分にないという場合、情報提供や助言は絵に描いた餅となってしまう。

 障害者を雇用する事業所に対しては、福祉事業所などとは異なり、どのような設備を必ず用意しておくべきか、障害者の数に応じてどれぐらいの職員を配置しておくべきかといった最低設置基準、配置基準が必ずしも明確に定められているわけではない。 メタリアルな条件を改善するか否かの裁量が事業所に委ねられているということもあり、就労支援者サイドはこの問題に対して自発的撤退を起こしていると言ってよい。

 しかし、事業所側が就労支援者側の行った情報提供、助言を実行するためにはメタリアルな条件の整備は欠かせない。しかし、就労支援をめぐる様々な事例研究においても、メタリアルな条件を考慮に入れずに、障害者雇用で働く当事者に対してどのような教育、訓練、助言を行ったのかについては饒舌に語っていても、メタリアルな条件は多くの場合言及がないことには驚かされる。

 障害者雇用におけるメタリアルな条件の調査は極めて重要であると考える。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック