【現代】業務を水増しする

 法定雇用率により、障害者を雇用する義務があるが、雇った障害者に提供できる業務を用意することができない。これは昨年度水増し雇用が問題になった公的機関、障害者の社内失業が常態化している民間企業に共通する課題である。しかし、雇用した障害者に業務を提供しなければ業務から疎外された障害者から虐待通報されても文句を言えなくなるし、職場の人間関係はギクシャクしたものになりやすい。「仕事はゆっくりやってもいい」「無理はしなくてもいい」という直属の上司からの声かけはとりもなおさず、障害者が配属された部署で業務の確保が難しいことの証左である。
 では、その事態をやりくりするために職場が採りうる選択肢は何なのか?そのうちの一つが今回取り上げる「業務を水増しする」という選択肢なのである。簡単に言えば、敢えて時間のかかる業務、手順、工程を設計することにより、雇用した障害者が時間をつぶしやすくしてしまうことなのである。筆者の知るいくつかの手法を提示しておこう。

①何度も繰り返し定期的に研修、講習を受講させる
 仮に雇用されている障害者の勤務時間が1日6時間であれば、1日、あるいは半日の研修、講習を受けさせればかなりの時間をつぶすことが可能になる。もちろん、将来的にその障害者にやってほしい業務があって研修、講習を受講させているのであれば問題はない。しかし、実際の業務とは関係のない研修、講習を受け続けている障害者も少なくなく、単なる時間つぶしになってしまっている場合は注意が必要である。

②移動時間のかかる業務を提供する
 例えば、複数の店舗、施設の清掃をさせる、郵便局、役所での手続きごとなど頻繁に移動の発生する業務を提供する、同じ部署の職員の出張に同行させることにより、勤務時間中の移動時間を作り出すことによって、時間を潰すといったことが考えられる。このうち、同じ部署の職員の出張に同行させるについては、当の障害者がやるべき業務があって同行させているのであれば問題はないが、単に時間つぶしのために同行させているのであれば、その障害者のスキルアップには寄与しない。

③あえて手間のかかる行程、手順を設計する
 例えば、障害者雇用のスタッフがフロア清掃をしているの見ると、掃除機がけ、雑巾ふきなどが全面がけになっていることがある。もちろん、丁寧なのが悪いことではないが、多くの熟練した職員が汚れた個所をピンポイントに清掃している姿を目にすると、障害者雇用スタッフの全面がけ清掃は若干異様なものに移る。障害者雇用スタッフの中にもピンポイント清掃ができる者がいない訳ではないだろう。しかし、ピンポイント清掃をやられてしまうと、障害者雇用スタッフの業務量が確保できないという場合、全面がけ清掃を時間をかけて行うことが推奨されてしまうことがある。

 障害者に「水増し業務」を提供する事業所は、そもそも業務を提供せずに放置する事業所よりはよほど良心的である。何もさせずに障害者を「いさせる」ことが、その障害者に有害な影響を与えてしまうことも理解している。しかし、その障害者をどのようにスキルアップさせていくのか、どのようにステップアップさせていくのかという発想は欠如している。だからこそ、時間つぶしのような業務を障害者に提供してしまうのである。「ちゃんと給料を払っているんだから文句を言うな」という理屈は通らない。簡単に単純労働を設計できなくなっているからこそ、障害者雇用スタッフの職能開発は重要なのである。
 

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