【過去】無人労働論(2)無人労働論前史

本連載が扱うのは、基本的にはIT技術普及後の無人労働化である。賛否両論のあるAMAZON商法、2008年のリーマンショック以来急速に普及したフィンテック(フィナンシャル・テクノロジー)、電子マネー、そして2015年以降に話題になっているAI(人口知能)およびロボット技術がどのように無人労働化を促進し、障害者雇用にどのような影響を与えるのかを明らかにすることが目指されている。

しかし、言うまでもない話だが、無人労働化はIT技術普及後に始まった話ではない。店舗の設備費や販売、窓口受付業務の人件費を削減するための
無人労働化は 日本でも、高度経済成長期には始まっていたと言える。今回はその例として、自動販売機、ATM(現金自動預け払い機)および無人契約機、無人券売機、チケット販売機などについて、簡単な紹介を行うことにしよう。

①自動販売機、自動券売機

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この文章を読んでいるほとんどの読者にとってコインを入れれば煙草、飲料、飲食物などが購入できる自動販売機は路上で当たり前に見る風景であったに違いない。日本で初めて実用されたのは1890年代前後に遡るが、普及を始めたのは100円新硬貨が誕生した1967年以降の話である。同じ年に旧国鉄(現JR)が無人券売機を導入した影響も大きかったと言われる。


自動販売機、券売機は人員削減は、販売に関わる人件費の削減には一役買うことができる。しかし、次回取り上げる初期のAMAZON商法と同様、完全な無人化を実現を実現することはできない。特に電子マネー導入前の段階では、投入された硬貨、紙幣の出し入れ、商品の入れ替え、機械のメンテナンスのため、度々業者が販売機、券売機の巡回を行わなければならなかった。

ただし、電子マネーに対応する自動販売機、無人券売機が普及したことにより、早晩には硬貨、紙幣の出し入れの必要性はなくなるだろう。無人券売機については、お金のチャージさえ可能であれば、発券の必要はなくなる。

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さらに、電子マネーの普及は鉄道の駅構内における無人店舗の存在を可能にした。下の写真は駅構内における無人キオスクの例である。

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おそらく、電子マネーの普及によっても、自動販売機における商品(モノ)の入れ替えには物流業者が必要となるだろう。飲食物を電子商品にする方法は、現時点では存在しないからだ。それでも、電子マネーの登場によって、旧来型の無人労働化の象徴であった自動販売機、自動券売機にも変化が生じようとしている。

②ATM(現金自動預け払い機)

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 ネットバンク、電子マネーの登場によってATMもまた消滅の一途を辿るかもしれない。しかし、無人労働化の前史としては重要なポイントなので、ここで取り上げておくことにする。ATM自体は1960年代の段階でも既に導入されていたらしい。しかし、急速に普及しはじめたのは民間企業でも週休二日制が導入されはじめた1990年代のことである。銀行の窓口というのはとにかく混雑するし、サービス受付時間が極端に短かかった。銀行職員による詳しい説明を要する契約、取引はともかく、貯金の出納、送金、残高確認などの簡易手続きならばATMで対応しようというのが元の狙いだったようである。

 ATMは21世紀になるとコンビニエンスストアにも設置されるようになった。これにより、貯金の出納は多少の手数料はかかるが24時間行うことも不可能ではなくなったし、ATMの前に長蛇の列ができることも少なくなった。少なくとも顧客にとっては、以前よりもはるかに便利にはなったと言える。しかし、ATMの普及に伴い、銀行の店舗は次々と姿を消していった。ATMに必要な人的労働力はお金の出納と操作が分からない時にガイダンスを行う電話受付担当の職員のみである。残った店舗でも、窓口業務は人件費削減のため、派遣労働者などの手に委ねられるようになった。ネットバンク、電子マネーほどではないにしても、ATMもまた無人労働化に一役買うことになったのである。

 また、ATMに派生した自動手続き機も次々登場した。サラ金業界における無人契約機の導入、各種チケット業界におけるチケット予約機の導入などがその一例である。無人契約機、チケット予約機を他の店舗に設置した企業にとって、自ら店舗を持つ必要は存在しない。店舗を維持したり、接客サービスを行う店員も必要とはしない。不明点があった時に質問に応対できるカスタマーサービスがあれば、それで十分なのである。

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以上、IT普及以前から進行していた無人労働化の例を概観してきた。確かに自動販売機、自動券売機、無人契約機などの段階でも、人的労働力のコスト削減は徐々には進行していたことになる。しかし、少なくとも電子マネーが導入するまではお金の出し入れは人的労働力に依存しなければならないし、モノを販売する場合には商品の入れ替えを行う物流業者の存在は不可欠であった。無人労働化がさらに進行するためには、電子マネー化のみならず、商品の電子化もまた不可欠であった。

この過渡期の無人労働化の過程を明らかにするため、次回はアマゾンの事例を取り上げてみることにしよう。

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