グレーゾーン学とアブノーマライゼーション論

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zoom RSS 【番外編】アブノーマライゼーション宣言(第2版)

<<   作成日時 : 2015/10/25 14:12   >>

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(現在の連載からは離れますが、久しぶりにアブノーマライゼーション宣言を話題にしようと思います。)

本ブログにおいて初めてアブノーマライゼーション宣言を発表したのは、2008年10月14日のことだった。宣言は修正されることなく、現在も本ブログに掲載されている。

http://uramonken.at.webry.info/200810/article_1.html

しかし、昨年秋から宣言を再読したところ、2008年の宣言(以下、第1版と略す)は、宣言者にとっても説明するのが困難な内容となっていることを痛感した。原因としては、

@第1版の言葉の統一が不十分であったこと
A当時、筆者が関心を抱いていた思想、理論がごった煮状態となっており、自らの言葉で語ることが十分にできていなかったこと。
B宣言者が20代の頃に考えていた構想(変異体の構想)と30代の頃に考えていた構想(異人の構想)が混交してしまい、十分な区別ができないまま宣言を発表してしまったこと

などが挙げられる。自らの非力さを呪うばかりである。

特に深刻だったのは、Bにおける2つの構想の混交である。第1版では「異邦人および変異体は〜」という主語で宣言がなされており、両者の構想にどのような違いがあるのかはほとんど示されていなかった。特に、当時の宣言者の強調点が変異体の構想にあったため、異邦人(異人)の構想はあまり反映されているとは言いがたい。

そこで、2015年10月25日に宣言者は、第1版の修正を行い、第2版を公開することになった。第2版では言葉の統一と思想、理論のごった煮状態を解消することを目指したのは言うまでもない。その上で、宣言を変異体の構想と異人の構想に分けて記述し、両者の違いが明確に伝わるように配慮した。第2版を通じて、変異体の構想が脱人間化による持続的な生の実現を主題にしていること、異人の構想がいかなる意味での集団同一性の問題化を主題にしていることは明確になったはずである。

詳細は本文を読んでいただければわかるが、少しだけ解説を加えておこう。変異体の構想については、ろう文化など障害文化論との連続性が見られるという評価を受けたことがある。変異体の構想が〈われわれ〉という集団を作ることに肯定的であるという点で、障害文化論と共通点を持つことは事実である。一方、生物学的介入に対する態度について、両者は袂を分かつ。もちろん、変異体の構想は人間社会において障害者と見なされる者をヒトの規格に合わせて改造することについては、障害文化論と同様、批判的である。一方で、先天的障害者と見なされた者がヒトという種を乗り越えるため、人間の次にくる者となるために行う生物学的介入については、むしろ肯定的である(もちろん、人間の勝手による改造は論外だが)。

一方、異人の構想が、障害文化論や変異体の構想と異なるのは、集団同一性に対する態度である。異人の構想は〈われわれ〉を作ること、〈われわれ〉の文化を作ること、〈われわれ〉の宣言を作ること自体を問題化する。変異体の構想が〈われわれ〉の連帯によって善なる集団を作ることができるという前提から出発しているのに対して、異人の構想はどんな集団であれ集団は危険なものであり、排他性こそが集団の本質だという前提から出発していると言い換えてもよいだろう。現在の宣言者の立ち位置は異人の構想に近づいていると言ってもよい。

以下に第2版の全文を掲載するので、参照していただければ幸いである。

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アブノーマライゼーション宣言(第2版)            2015.10.25 高森 明

変異体の構想

(序文)

 人間としての承認、人権保障、人間としてふさわしい脳、身体、健康、容姿、機能の獲得。人間としてふさわしい行動、価値観、立ち振る舞い、認知の獲得。人間として当たり前の生活の実現・・・人間社会において障害者と見なされた者に対する取り組み、あるいは障害者とみなされた者による取り組みは、何を重視するかの違いはあっても、〈人間らしさの実現〉という行動原理の下に推進されてきたと考えられる。ここでは、〈人間らしさの実現〉は無条件によいこととされ、いずれの運動、取り組みもその前提を疑うことなく運動を推進してきたと言える(ノーマライゼーション、インクルージョン、ユニバーサル社会、人間の安全保障など)。

 もちろん、あなたの夢や願望がこれらの目的に合致しているのであれば、何ら問題はない。〈人間らしさの実現〉を目指すこれらの運動は資源が許す範囲で喜んで力を貸してくれるだろう。しかし、その当事者があらゆる意味で〈人間らしさの実現〉を目指してはおらず、むしろ人間中心の思考、あり方を乗り越えようとしていたとしたら、どうだろうか。

 本宣言は〈人間らしさの実現〉という前提に支えられている行動原理を全て問題化し、白紙化するとともに、それとは異なる行動原理を提起する。宣言は必要に応じて絶えず更新されていくが、宣言が目指す目標は脱人間化とそれに基づく持続的な生の実現である点は変わることがない。

(定義)

  変異体とは、自らをヒトから生まれた新種の種と位置づけ、人間に回帰するのではなく、〈人間の次にくる者〉〈ヒトという種を乗り越えること〉を志向する者たちのことである。

(条文)

第1条 わたしたちは、人間としての承認を行う立場にある者の存在を否定する。承認は人間社会において無条件に人間の一員と承認されている者たちのみに与えられた特権だからである。

第2条 同様に、わたしたちは人間社会において無条件に人間と認められた者たちによって与えられる人権を永久に放棄する。

第3条 わたしたちはヒト集団からの変異体(有望な怪物)の発生、増大、跳梁跋扈、持続的な生の実現、枝分かれ、そして新種の誕生を無条件に歓待する。

第4条 わたしたちはヒトを基準にして、人間社会に適合しやすいように脳、身体、健康、外見、機能を改造されることを拒絶する。

第5条 わたしたちは「違ったまま」の脳、身体、外見、機能で生きていくこと、ヒトの規格に合わないように脳、身体、外見、機能を自ら改造することも、自ら機械化することも、持続的な生を目指すための手段に含まれることを確認する。

第6条 わたしたちは人間の基準によって、わたしたちがどのような集団を作るのか、どのような知識と技術を編み出すのか、どのような規範、行動原理を作るのか、どのように生活してくのかを決定されることを拒絶する。それらは変異体がヒトから訣別していく過程で共決定していく事柄である。

第7条 わたしたちはどこを生活圏にするのかは、わたしたちが共決定していく。その選択肢には、人間社会の中に巧みに空白地帯を見つけ出す、人間社会を拒絶し社会の枠外で生きるなども含まれる。

第8条 わたしたちと人間との関係のあり方もまた、わたしたちが共決定していく。その関係は友好的でも、敵対的でも、拒絶的でも、棲み分け的でも、不可侵的でもありうる。


異人の構想

(序文)

 人間、国民、階級、宗派、職業集団、地域集団、血縁集団(家族など)、社会運動、アウトサイダー集団、健常者と障害者・・・人間は様々な基準に基づき、〈われわれ〉という集団を作り出す。そして、同時に〈われわれ〉の外部には〈彼ら〉を、内部には異人を作り出す。

〈われわれ〉の内部に作り出された異人のうち、あえて異人の役割を引き受け、〈われわれ〉が共有している常識に疑問を付し、問題提起する者が異人である。宣言者は自らが異人の役割を引き受け、〈われわれ〉の常識の攪乱者となることを宣言する。

(定義)

 異人とは、社会集団の内部にあって、いかなる〈われわれ〉や〈われわれ〉のあり方を疑い、問題提起し、常識を攪乱しようとする者である。

(条文)

第1条 わたしはヒト,人間というカテゴリーそのものに疑い、問題提起する。

第2条 わたしはいかなる〈われわれ〉という集団に疑い、問題提起する。

第3条 わたしは〈われわれ〉が有するいかなる常識を疑い、問題提起する。

第4条 わたしは〈われわれ〉が有するいかなる理念及び行動原理を疑い、問題提起する。

第5条 わたしは〈われわれ〉が有するいかなる規範を疑い、問題提起する。

第6条 わたしは〈われわれ〉が自明視する生活のあり方を疑い、問題提起する。

第7条 わたしは〈われわれ〉が自明視する関係のあり方を疑い、問題提起する。

第8条 わたしはいかなる〈われわれ〉のための宣言を作らない。

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論文作成のため、ブログ更新休止中。論文が落ち着いたら、再開する予定です。
こうもり
2016/02/07 15:23

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